吹奏楽コンクールは、吹奏楽ファンにとって、参加校・団体の演奏技術や表現を楽しむ絶好の機会です。
テレビでもたびたび学生の吹奏楽コンクールの様子が取り上げられています。
今から20年前のある番組で「吹奏楽部の強豪校追跡」シリーズが出た時は、一気に大人の吹奏楽ファンは増えました。
激しい戦いのように見えて、課題曲から名曲が生まれ親しまれている曲があります。
この記事では、吹奏楽コンクールの基本的なルールや楽しみ方、注目すべきポイントを紹介します。
吹奏楽コンクールの基本ルール。これは知っておこう
吹奏楽コンクールの正式名称は「全日本吹奏楽コンクール」で、全日本吹奏楽連盟と朝日新聞が主催しています。
アマチュアの吹奏楽団体のみ参加資格があり、学校・大学・一般と部門を分けて行います。
では、さらに細かい基本ルールを紹介しましょう。
吹奏楽コンクールの進め方
吹奏楽コンクールは、全日本吹奏楽吹奏楽連盟に参加申し込みをするところからスタートします。
編成や演奏者数を考えて、参加する部門を決めます。
一般的に知られている大編成の「A部門」では以下の図のように、全国大会へ行ける学校や団体を振り分けます。
※府県大会には北海道での大会も含まれます
金・銀・銅賞と評価がつき、金賞を受賞した団体で府県・支部大会への代表を選びます。
金賞を受賞したからといって、代表権は取れないのです。
金賞を取ったのに、代表権がないのは残念ですよね。
昔は「3出制度」と呼ばれる制度はありました。
この制度も「参加団体には酷だ」と不評の制度でした。
激戦地区はどうなのか?
大阪や関東方面は、参加する中学校・高校が多いので地区大会が行われます。
吹奏楽ファンは、地区大会から推しの学校を応援に行きます。
一部例外はあるよ
今までの実績から地区大会・出場を免除(シード権)される学校はあります。
アマチュアのみが認められ、学生と一般団体が参加可能
吹奏楽コンクールは、アマチュアの団体が規定に基づいて演奏し、評価されます。
参加団体として
- 小学校
- 中学校
- 高等学校
- 大学
- 職場・一般
と分けて行われます。
最近では、少子化の影響から「同一経営の学校では中・高校の参加を認める」といったルールがつき始めています。
テレビで紹介されているのは、「A部門」に参加している学校や団体で、演奏者を最大65名としています。
中学生では50名、高校・大学は55名までと演奏者の登録を認めています。
吹奏楽コンクールに参加できない学校・団体、失格事例はあります
時々、代表になった学校や団体がいきなり代表取り消しになるケースがあります。
アマチュアの団体が参加するコンクールなので、厳しい規定はあります。
- 音大・芸大は参加不可
- 学校と団体(団体同士も)のかけもちは禁止(後日参加者リストでわかる)
- 大学の部において、同一の大学に在籍している学生(大学院生を含む)とする。
音大や芸大に在籍している人なら、上手に吹けるのは当然ですから、参加はできません。
たまに高校と一般の吹奏楽団とのかけもちをして、後日参加リストのチェックで「失格」となるケースはあります。
重複参加者のいた学校や団体が代表として選ばれていた場合は、連盟側の判断に委ねられるけれど、たいていは失格処分としています。
一般と大学生のかけもちってのは
聞かないねぇ
金賞をとって代表になったところは
痛いわね
例外としては、「参加団体内での課題曲と自由曲の楽器持ち替えは認める」はあります。
実際に、自由曲でピアノやハープを木管や金管楽器の人が担当するケースはあります。
大学内にある吹奏楽サークルは?インカレは参加できるの?
大学の部については
- 大学が「部」として認定していること
- 全日本吹奏楽連盟に加入し、連盟が定める費用を負担できること
- 連盟に加入の際は、同一大学で登録すること。学部ごとの登録は認めない。
- 大学で都道府県を異にする地域に設置された学部の場合は、その地域名を冠してそれぞれの会員連盟に加盟することができる
と少しややこしい条件がついてきます。
大学内で部と認められていない学内サークルは、基本は吹奏楽コンクールへの参加はできません。
大学での規定にもよるよ
大学の部が一番ややこしいわね
しかし、「インカレ」に関しては、吹奏楽コンクールに参加するには「職場・一般の部」での参加となります。
吹奏楽コンクールで演奏する曲ってどうなの?
基本は課題曲と自由曲の2曲を演奏。B部門と小編成は自由曲のみを演奏します。
ただし、多数の学校・団体が参加するので、時間制限を設けています。
譜面の入れ替えや打楽器奏者・パート内などの移動を含めた時間も含まれるので、
- 大編成「A部門」は課題曲と自由曲の2曲を12分以内
- B部門と小編成は自由曲のみで7分以内
定めています。
他には、
- 基本の楽器構成は、木管楽器・金管楽器・打楽器とする
- エレキギターの使用は不可。コントラバス・ピアノ・チェレスタ・ハープの使用は認める。
- コントラバスとハープで使われる反響箱の使用は禁止。
- 自由曲に歌詞付きの曲は認めない。スキャットやハミングはよい。
と基本ルールを定めています。
さて、「課題曲」と出てきていますが、毎年4曲が発表され「自分たちが得意としていて、自由曲とのバランスがよい曲」を選びます。
発表されるのが1年前ってのが
最近の傾向ね
昔は5曲の選択肢って
あったわよ
全日本吹奏楽連盟から委託されて発表される課題曲や、公募で選ばれる曲があります。
課題曲なのに「素晴らしい!名曲だ!」と語り継がれている曲や、「今でもかなり難しい」とプロも唸る曲はあります。
今でも評価が高い過去の課題曲は、自由曲や演奏会で使用されたりと名曲は次々と生まれています。
「さくらのうた」は人気が高くて、吹奏楽仲間での結婚式で演奏したりアンサンブルでも人気があります。
毎年、「東京佼成ウィンドオーケストラ」や「フィルハーモニック・ウィンズ大阪(大阪)」と有名な吹奏楽団が「課題曲コンサート」を開いて、模範演奏や過去の課題曲を紹介しています。
自由曲でのルールは?人気曲は?
自由曲は、課題曲と合わせた規定時間内に納まることと「作曲者の意向でもあるけれど禁止していること」を守らなければなりません
厳しいのは「著作権問題」です。
選んだ曲が長すぎて、編曲が必要となった場合は事前に著作権者から許可をもらわなければなりません。
ややこしいんだ
著作権問題はなめちゃだめよ
最近は、コンクールのライブ配信が行われるようになった反面、著作権問題から配信されない曲はあります。
自由曲で選ばれる人気曲は?
数年おきに自由曲の人気度は変わっています。
私が中学で吹奏楽部員だった時は、アルフレッド・リード氏や大栗裕氏の曲が人気でした。
今は課題曲との相性を考えているのか、ばらつきは多少あります。
しかし、自由曲の人気にあがる作曲者として、
- アルフレッド・リード
- 樽屋雅徳
- 天野正道
- フィリップ・スパーク
- 酒井格
- 大栗裕
など日本人はもちろん海外の作曲家のものは出てきます。
さらに人気があり長年愛される曲としては
- マードックからの最後の手紙
- たなばた
- 復興
- 宇宙の音楽
他たくさんの名曲が演奏されます。
「マードック〜」はフルートの
ソロが鍵なのよ
フルート吹いている人
なら憧れなのよね
自由曲で人気のある曲を2曲お聞きください。
ミュージカル曲を吹奏楽用に編曲する団体があれば、鉄板曲として数年変更をしない団体もあります。
全国大会のためにという手段でローテーションをかける団体もあります。
しかし、小中高大学生は毎年同じメンバーで演奏するのではないので、同じ曲を吹いても結果は変わるので、指揮者と演奏者との息が合っているかは問われます。
大人で楽しむ吹奏楽コンクールとは?
大人になってから、初めて吹奏楽コンクールに興味を示し、どのように聞きにいけばいいか?
最初は気軽に自分なりの楽しみ方で聞くのがよいです。
では、どういう楽しみ方をすればよいのでしょうか?
3月〜6月にかけて気になる楽団の演奏会を聞きにいってみる
ちょうど学年や団員のメンバーが入れ替わる時期で、吹奏楽コンクールにエントリーしている時期が春先です。
一度、課題曲のスコアを確認して全員でどの曲にするかを決定や検討に入ります。
ほぼ確定した時に、コンサートなどで課題曲を全曲吹いたり、自由曲候補を演奏します。
団体としては、コンクールに向けて「観客の反応をみる機会」としてコンサートに課題曲と自由曲を入れてきます。
最寄りの中高の吹奏楽部や団体が、吹奏楽コンクールに出るとわかれば、ぜひ聞きに行ってみてください。
初めて吹奏楽コンクールの雰囲気の曲の雰囲気をつかめます。
地区大会もしくは府県大会を実際に聴きに行く
演奏は会場で生音を聴くのが一番!
吹奏楽コンクールのチケットは、地区大会〜支部大会までは比較的買いやすいです。
気になる学校の出演順番やどの大会から挑戦するかを確認して、チケット購入しましょう。
プログラムは販売されているので、各学校や団体の課題曲・自由曲がわかります。
気になっていた学校の
音源をCDで買えるよ
昨年(2024年度)からは、試験的ですけれどもデータ販売で購入できるようになりました。
事前にQRコード付きのカードを購入し、有効期限内にダウンロードする方式です。
会場の雰囲気や演奏している様子をじっくり見よう
※この写真は2023年大阪府吹奏楽コンクールの会場にあったものです。
吹奏楽のイベントとはいえ「コンクール」なので、普段の演奏会以上に気をつけるべき点があります。
- 撮影・録音は絶対に禁止(見つかれば退場です)
- 応援している学校への声援はダメ
- 自由曲の演奏が終わり指揮者が台から降りてから拍手
- 携帯は電源オフ
- 演奏中の退場は禁止(特別な事情は係員を呼ぶ)
これらが、吹奏楽コンクールで「最低限気をつける・守ってほしい」点です。
なんだか堅苦しいね
演奏会以上に気をつかうの
「コンクール」は吹奏楽や音楽に精通している方が審査員に入ります。
わずかな演奏のミスなどをチェックするために、静かな環境で審査しなければいけません。
そのために、演奏会以上のマナーが求められます。
マナーは厳しいけれど、吹奏楽コンクールの雰囲気は楽しもう
吹奏楽コンクールは、毎年問題が起きて議論にあがります。
審査が入るゆえなのですけれど、ガチガチに緊張する必要はありません。
どの参加学校も団体も、コンクールのために忙しい中でも練習を重ねてきました。
とても難しい曲を中高生がこなしている姿には驚くばかりです。
あなたが、楽器演奏を大人から始めているなら、中高生の演奏に驚くばかりでしょう。
パンフレットを買って、演奏曲を見ると初めて聴く曲ばかり。
驚くのは当然かもしれません。
傍目からみると、残念な演奏をする学校もあります。
それでも頑張って演奏している姿に、心打たれるでしょう。
会場では音源販売や記念グッズが販売されています。
グッズを買うことで今後の吹奏楽コンクール開催を維持できるし、観客が聴いてくれることで参加校は頑張って演奏をします。
SNSなどで吹奏楽仲間を作る機会ができる
今やSNSで吹奏楽情報が得られるようになりました。
あなたが行った吹奏楽コンクールの会場のことや、気に入ってた学校についての情報をSNSで発信すると、自然に「吹奏楽仲間」ができます。
すると、他の地域の吹奏楽ファンとの交流が生まれて、吹奏楽コンクール以外の情報をキャッチしやすくなります。
今まで「趣味での友達がいない」と悩んでいたのが、一気に解決されます。
それぞれに好みはあるので、相手の好きな団体や学校を尊重し、親交を深めましょうね。
まとめとして
吹奏楽コンクールを観ることは、演奏者としての成長にもつながります。
もちろん、聴くだけでも満足という人には、心に潤いをもたらすものです。
全くの大人の初心者がコンクールに影響を受けて「コンクールに出たい」と思っても、なかなかハードルは高くがっかりするかもしれません。
しかし、吹奏楽コンクールが全てではなく、初心者歓迎でまったりとした活動をしている団体はあります。
吹奏楽コンクールに参加している学校の生徒さんは、人一倍努力をして練習に励んでいます。
その姿に心打たれるものはあります。
コンクール観戦を通じて、新たな音楽の魅力を発見し、大人になってからの音楽の楽しみ方を広げてください。